契約を変更したいときに知っておきたい実務と法律の基本
ビジネスの現場では、契約締結後に「やっぱり条件を変更したい」と思う場面が少なくありません。仕様変更や納期延長、金額の見直しなど、契約の内容を変更したいときに必要な実務対応と法律上の注意点について、解説します。
- 契約は変更できるの?
結論から言えば、契約は原則として当事者の合意があれば変更可能です(契約自由の原則・民法521条)。ただし、書面や記録を残さずに口頭で変更しただけでは、後々トラブルになりやすいため、契約変更には文書化が必須です。
- 契約変更が必要になるよくあるケース
- 仕様変更(業務範囲や成果物の条件が変わった)
- 納期延長(不可抗力や事情変更によりスケジュールが後ろ倒し)
- 報酬・金額の変更(工数の増加・追加発注など)
- 人員や体制の変更(担当者やチーム体制が変更になる)
特にフリーランスとの取引や業務委託契約では、案件の進行に応じて柔軟な対応が求められることが多く、変更が発生しやすい場面といえます。
- 契約変更の方法とポイント
契約変更をする場合、以下の手順を踏むのが基本です。
- 変更内容について当事者間で合意する
- 変更の内容・理由・発効日などを明文化する
- 既存契約との関係を明確にする(変更契約/修正契約など)
- 署名・押印を行う(電子契約でもOK)
また、実務上は以下のような形で契約変更が行われることが多いです:
- 変更契約書(補足契約書)を締結する
- 覚書(既存契約に紐づけた内容の確認書)を交わす
- 契約変更における注意点とトラブル事例
契約変更時には、以下のようなトラブルが発生する実例が考えられます。
実務で起こりやすいトラブル事例
- 報酬の認識違いによる未払い:フリーランスが途中で追加業務に対応したが、企業側は「契約内の範囲」として追加報酬を支払わなかった。
- 契約解除による損害賠償請求:企業がより条件のよい委託先に乗り換えるため、既存契約を一方的に解除。元の委託先が損害賠償を請求。
- 契約変更時の不利益変更:契約更新時に交通費や支払い日などを一方的に変更されたことにより、フリーランスや従業員との信頼関係が悪化した。
契約変更時の実務上の注意点
上記事例を踏まえて以下の点に注意するとよりリスクの回避につながります。
- 一方的な変更は無効:当事者の合意がなければ、契約変更は成立しません。
- 合意の事実を証明できるようにする:口約束だけでは、トラブル時に弱く、契約変更の有効性が争われる可能性があります。
- 既存契約との整合性を保つ:変更後の内容が元の契約と矛盾しないように整理し、変更内容が他条項に影響を与える場合はその点も明記します。
- 契約書に変更方法を明記しておく:最初の契約書に「変更は書面によること」と定めておけば、後からのトラブル防止につながります。
- トラブルを防ぐために
契約変更は柔軟な対応を可能にする一方、誤解や認識のズレによるトラブルも生じやすい場面です。以下のような点に気を配ると安全です。
- 変更内容はできるだけ具体的に書く(「納期を2週間延長」など明確に)
- 変更に伴う他の条項への影響も確認する(報酬・納品日など)
- 双方で納得した内容で合意する(一方的な要望の押し付けは避ける)
- まとめ
契約変更はビジネスの現場ではごく普通に起こることです。ただし、変更内容や合意のプロセスを曖昧にすると、トラブルの火種になりかねません。
だからこそ、変更時には「文書で残す」「合意の内容を明確にする」「既存契約との関係を整理する」という3つのポイントを押さえることが重要です。
適切な契約変更の対応を行うことで、信頼関係を損なわずに柔軟な取引を継続することができます。